システム開発の業務委託における請負契約と準委任契約の違い

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業務を効率化する手段の一つとしてシステム開発があります。しかし、システム開発を自社の社員だけでは実施できない会社の方が多いはずです。

自社でシステム開発をすることができない場合、外部の会社にシステム開発を依頼することになります。システム開発の業務委託と呼ばれるものです。

システム開発を業務委託する場合、依頼する先の会社と契約を結ぶ必要があります。その契約には請負契約と準委任契約とが良く使われます。

これらの契約には明確に違いがあります。システム開発を外部に依頼するさいには、契約の違いを理解した上で適切な契約を結ぶ必要があります。

システム開発を外部に依頼するさいに結ぶ契約の違いとそれぞれに向いているシステム開発のケースを解説していきます。

業務委託とはシステム開発に関する業務を外部に任せること

会社の業務をより効率化したり、連携を強化したりする手段の一つとしてシステム開発があります。システム開発では、コンピュータを利用して業務を自動化したり、効率的にしたりする仕組みを構築します。

このシステム開発をするためにはシステムの設計やプログラミング、サーバーなどに関する専門的な知識が必要になります。会社にそれらの専門知識を持った社員がいない場合、自社だけでシステム開発をすることはできません。

システム開発のように自社では対応できない業務を、外部の会社に任せること業務委託といいます。システム開発に関する専門知識を持った外部の会社に、自社のシステムを開発するように依頼することになります。

図1. システム開発の業務委託

依頼する側の会社は委託者またはユーザーと呼びます。依頼された業務を実行する会社は受託者またはベンダーと呼びます。受託者は委託者の依頼に従って、システム開発に関連する業務を代わりに行います。

業務委託では委託者と受託者との間で契約を結びます。業務委託で一般的に結ぶ契約は請負契約と準委任契約の2つがあります。

業務委託には準委任契約と請負契約がある

システム開発を外部に業務委託する場合、最終的に受託側に対して求めるものを依頼する会社と受託する会社との間で決めておく必要があります。何かしらの完成品がほしいのか、それとも決まった業務を遂行してほしいのかを明確にします。

受託側に求める目的を明確にして、それが達成されたら報酬を支払うということを決めて契約にします。契約で明確に決めていないと、自社と委託先の会社との間でトラブルになる可能性があります。

業務委託での主な契約形態は準委任契約請負契約の2つがあります。この2つの契約は報酬を支払う条件が違っていて、それぞれ適したケースがあります。

業務委託する際の契約形態の違いとどのような利点や欠点があるか解説していきます。

請負契約は依頼した成果物を完成させることを約束する

請負契約依頼した仕事を完成させることを目的とする契約です。依頼者は完成してほしい仕事の内容や成果物を契約で決めます。受託側が仕事を完成させて成果物を納品したら発注側は報酬を支払います。

図2. 請負契約

発注側が報酬を支払う場面は依頼した仕事が完成して成果物が納品されたときのみです。仕事の前払いを払う必要は基本的にありません。例外として、事前に前払いの特約を結んだ場合は仕事の完成前に支払うこともあります。

請負契約の特徴として、受託側には成果物を完成させる義務があります。納品した成果物にミスがあれば、一定期間内なら不具合の修正依頼を出すことができます。もし契約で決めた成果物が納品されないとなったら、損害賠償の請求をすることも可能です。

システム開発では、計画していたプロジェクトが様々な理由で中止になることもあります。そのような場合、成果物が納品されたときに報酬を支払う請負契約では支払いは一切発生しないのでしょうか。受託側に特に問題がない状態で契約を途中で解除することになると、発注側が受託側に損害賠償をする必要があります。

準委任契約は依頼した業務作業を実施することを約束する

準委任契約依頼された作業を実施することを目的とする契約です。発注側は一定の業務を実施するように依頼します。受託側が業務作業を適切に行った期間に応じて発注側が報酬を支払います。

図3. 準委任契約

準委任契約はいわば労働力を提供する契約になるため、支払う報酬は働いた期間に対して決まります。想定外のトラブルが発生して労働時間が伸びた場合でも、依頼された仕事を実施するのに必要な労働なのであれば報酬を支払わう必要があります。

準委任契約は請負契約と違い、仕事を完成させる責任を問うことはできません。成果物が完成していなくても求められた通りに業務を行っているのであれば契約違反にはなりません。

代わりに仕事をしっかりしていることに責任を持たせることはできます。 受託側は業務が遅れそうだったり、問題が発生したりしたら対策を取ったり、発注側に相談したりするなどしなければなりません。仕事の進捗を管理する義務を怠っていた場合は発注側は損害賠償を請求することもできます。

請負契約と違い、発注者と委託者のどちらからも契約の解除ができます。そのため、繫忙期のときだけ契約するということもできます。

請負契約は求める成果物を入手しやすい

請負契約と準委任契約のわかりやすい違いは仕事の完成に責任があるかどうかという点です。受託者が仕事を完成させる責任を負うことになる請負契約は、求める成果物が明確に決まっている時に適しています。

請負契約は契約を結ぶ段階で、どのような成果物を受け取ったら報酬を払うということを明確に決めます。請け負う側としては、その成果物を完成させないと報酬が一切発生しないため、完成させることを第一に作業することになります。

システム開発では完成した成果物が「要求したのと違う機能になっている」「要求した性能を満たさない」となる場合があり、求める成果物が得られない可能性があります。請負契約では受託者側に契約で指定した成果物を完成させる義務があるため、これらのリスクを減らせます。

成果物が要求と違う場合、委託者は修正を依頼することができます。委託者には損害賠償を請求する権利もあるので、受託者はよほどのことが無い限り指定された成果物を完成させるように努力することになります。

請負契約は受託者に仕事を完成させる責任を負わせるので、そのリスクの分だけ報酬が高くなりやすいです。しかし、報酬が高くなる点を許容できるならば、求める成果物を確実に得たい場合は請負契約の方が適しています。

請負契約は開発に関する予算管理がしやすい

請負契約で支払うタイミングは完成した成果物を受け取る時です。トラブルが発生したことでその対応に増員した場合でも、その費用を払う必要はありません。

システム開発にかかる費用は固定費用と人件費で構成されています。システム開発に必要な予算を決めるさいはこれらの費用を考慮して決めることになるでしょう。しかし、固定費用と人件費は予定していたよりも多くなる可能性があります。

固定費用はシステムを構成するサーバーなどの機器やOSのライセンス料になります。もし、構築したいシステムが想定していたよりも高性能なサーバーが必要になった場合、固定費用は当初の予定よりも高くなります。

システム開発で雇うエンジニアの人数や期間によって人件費は決まります。もし、開発期間が予定よりも伸びた場合、エンジニアを雇う期間が増えることで人件費もその分高くなります。

請負契約では、このようなシステム開発に必要な費用に対して追加で支払いはが発生することはありません。完成した成果物が納品されたさいに支払う報酬を契約の段階で決めておき、その額だけを支払えばよいのです。

契約の段階で決まった報酬から大きく変更されることが無いので、プロジェクトにかかる予算を予想しやすくなります。

システム開発の進捗が遅れた場合に費用が追加で発生する可能性があると、そのリスクの分も含めて予算を組む必要があります。例え、進捗が遅れても追加で費用が発生しないと予想できる請負契約は予算管理がしやすいというメリットがあります。

請負契約は契約後の仕様変更には対応しづらい

システム開発で欲しい成果物というのは初期の段階で明確になっていない場合はよくあります。また、システムが形になっていく過程で、想定していなかった機能が必要だと判明することもあります。

請負契約はどのような成果物を受け取るかは契約段階で決めます。作成される成果物は契約にある通りのものになるので、契約段階で決めた機能に不備があった場合はそのまま作成されてしまいます。

システム開発では、機能の追加や修正のように途中で仕様変更をしたくなる可能性があります。しかし、請負契約の場合、仕様変更をするということは成果物の内容が変わるということであり、契約内容を変更しなければいけなくなります。

頻繫に契約内容を更新するということは容易ではありません。そのため請負契約では契約後の仕様変更が対応しづらいのです。請負契約を使う場合は、契約段階で仕様を確定しておく必要があります。

準委任契約は仕様が確定していない開発でも依頼できる

システム開発には業務で使用するシステムの開発だけでなく、開発したシステムでトラブルが発生しないように監視する運用保守業務もあります。このような運用保守業務ではシステムのチェックやプログラムの改修など特定の作業を行いますが、成果物は発生しません。

また、商品を販売するWebサイトは機能の開発・追加を繰り返してWebサイトを改善していきます。継続的に改善をしていくので明確に完成品と呼べるものはありません。

このような完成品や成果物というものがない運用保守業務やWebサイト開発などは、準委任契約が適しています。準委任契約は一定の業務を遂行することに対して契約を結ぶので、具体的な成果物が決まっていなくとも契約することができるためです。

システム開発では、開発途中で機能の追加や変更をする場合もあります。契約段階で仕様を確定している請負契約と異なり、成果物の仕様について契約に含まれていない準委任契約は仕様変更にも柔軟に対応することが可能です。

システム開発の工程ごとに契約の種類を変える場合もあります。準委任契約は作成する成果物が具体的になっていない工程に適しています。

準委任契約は業務に必要な労力を確保しやすい

システム開発では繫忙期の期間だけ追加人員が欲しいというような場合があります。そのような業務では成果物が欲しいというより、特定の業務をする人員が欲しくなります。

準委任契約では、決められた仕事をすることが契約の目的で、報酬も労働時間に対して払います。これは特定の業務を決まった期間だけやって欲しい状況に適しています。

システム開発にはテストや運用のような「やるべき業務は決まっているが何か成果物ができるものではない」工程があります。準委任契約ならば、テスト工程や運用工程の期間だけで人員を増加するということもできます。

準委任契約は請負契約と比べて自由に契約の解除ができます。忙しい期間だけ働いてもらい、落ち着いたら解約するということもやりやすくなっています。

準委任契約は手が足りない期間に必要な労力を確保するのに適した契約といえます。

準委任契約は望む結果が得られなくても支払いが発生する

決まった仕事をすることで報酬が発生する準委任契約では、請負契約と違い成果物を完成させる義務はありません。成果物が完成しなくてもしっかりと業務をしているなら報酬を支払う必要があります。

成果物について契約しているわけではないので、望んだ品質の成果物でなくても請負契約のように無償での修正を依頼したり賠償を請求したりすることはできません。

システムが望む品質になるように機能の追加・変更をする必要がある場合、労働時間に対して報酬を支払う準委任契約ではその追加作業の期間に対しても支払いをしなければなりません。予定していた期間で望む品質の結果が得られなければ、追加費用を払って対応する必要があるのです。

システム開発ではシステムを効率化する方法を調査・分析する場合もあります。そのような工程では、ちゃんと業務をしていても望む結果が必ずしも得られるとは限りません。希望する結果が得られていない場合でも労働時間に沿って報酬を支払わなければならないのです。

システム開発では要件定義や設計の工程を経て望むシステム像が確定します。その後の工程であるプログラム開発の段階では望む結果を確実に得るために準委任契約ではなく請負契約を結ぶ方が適しています。

準委任契約は想定外の作業が発生した場合、追加費用が生じる

準委任契約は決まった業務をする労働時間に対して報酬を支払います。報酬の判断基準になる労働時間が増えればその分支払わなければいけない報酬も増えることになります。

システム開発では決められた期間内にどのくらいの業務ができるかを想定して、それをもとに計画を立てて開発を進めます。もし、開発途中で想定していなかった問題が判明したり、追加で必要な機能に気づいたりしたらそれらに対応する必要があります。その場合、想定していたよりも作業期間が延びます。

請負契約のように成果物を受け取って初めて報酬を払う場合では、追加の人件費がかかってもそれは請け負う側の負担になります。そのような契約では、請負側はできるだけ追加の作業が発生しないように注意します。

準委任契約だと、追加の作業が発生してもその分の費用を発注側が負担することになるので、追加作業を発生させないようにしようという気が請負契約よりも持ちにくくなります。発注側で追加費用が発生しないように業務をしっかりと行うよう注意喚起する必要があります。

余分な支払いが発生させないためには、受託者から共有される開発作業の進捗状況に注意するべきです。遅れやトラブルが発生しているようなら、スケジュール調整や仕様変更について受託者と相談することも必要です。

まとめ

システム開発を外部に依頼する業務委託には、仕事の完成を目的とする請負契約と業務を遂行することを目的とする準委任契約の2種類の契約があります。

システム開発のプロジェクト全体で一つの契約形態だけで契約するのではなく、開発の各工程ごとに請負契約と準委任契約を使い分けることも可能です。

請負契約は成果物を完成させる責任が受託者に課せられているため、成果物を確実に得たい開発で結ばれます。ただし、成果物の仕様変更には対応しづらいので、契約の段階で成果物の使用が明確になっている必要があります。

要件定義や設計の工程を経て、作成するべきシステム像が明確になったプログラム開発の工程で請負契約が使用する場合が多いです。

準委任契約は成果物が明確になっていない工程で結ばれることが多いです。システムをどのようなものにするか決める要件定義や設計の工程や、明確な成果物が発生しないテストや運用の工程に適しています。

準委任契約では作業が遅延した場合、その分追加の費用を支払わなければいけません。開発の遅れやトラブルが発生していたら調整できるように、作業の進捗に注意を払うようにしましょう。

請負契約と準委任契約の特徴やメリット・デメリットを理解することで、実施したいシステム開発に適した契約を結べるようにしましょう。

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