システム開発で課題管理表を作成する意味とは

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システム開発を進めていくさいに、必ずといっていいほど課題管理表を作成することになります。この課題を管理するための表をきちんと作成できていればシステム開発が成功する可能性は高くなります。

しかし、課題管理表は不適切な方法で運用すると、ほとんど更新されずに意味のないものになったり、記載されている情報が不十分で使いずらいものになったりします。

課題とは何なのか、なぜ課題管理表が必要になるのかという点について理解していないと、課題管理表の役割を果たすことができずシステム開発の失敗につながります。

システム開発を成功させるために重要となる課題管理表について、その役割と運用時の注意点を解説していきます。

課題管理の目的はシステム開発完了のために目標と現状の差を解消すること

システム開発を進めていく過程で様々な問題が発生します。発生した問題を解決してシステム開発を成功させるためには課題管理が重要になります。

課題管理を理解するためにはまず、管理する対象となる「課題」とは何かを理解する必要があります。

システム開発では理想となるシステム像を目指して開発します。しかし、様々な要因で理想と現状との間に差が生じさせる問題が発生します。その問題を解消するための対策が「課題」となります。

例えば、「品質が低下している」という事実があるとします。この事実は理想とする状態を阻害する要因であり「問題」と呼びます。しかし、問題の内容だけが分かっても何を改善すべきか判断できません。

なぜこの問題が発生しているかという原因を深堀していき、対処方法を定めます。「品質が低下している」という問題を解消するために「チーム内で成果物のレビューをする」という対策まで落とし込んだものが「課題」です。

図1. 問題と課題の定義

つまり課題管理では理想と現状との差を埋めるための対処方法である課題を管理していきます。課題を改善していくことを積み重ねていけば自然とシステム開発も成功していきます。

課題管理の目的は、理想と現状との差(問題)を解消するための改善方法(課題)を管理して、システム開発を成功に導くことになります。

システム開発における課題管理表の役割

システム開発の成功を目指して課題を解消していく課題管理において、課題管理表は欠かせない重要なものになります。

システム開発においてよく作成されている課題管理表ですが、その役割を理解していないとシステム開発中に発生した問題の一覧を作成するだけになってしまいます。課題管理表を適切に運用できていないとシステム開発が失敗につながる可能性もでてきます。

システム開発を成功に導くために重要となる課題管理表の役割を解説していきます。

課題の認識違いや抜け漏れを防ぐ

システム開発において問題は日々発生します。解決するために複数の対応策を取らなければならない場合もあります。

問題が発生してから時間がたつと、課題の詳細な内容やどこまで対応したかについての記憶が薄れていきます。記憶があいまいな状態で課題に対応しようとした場合、思い違いにより誤った対応をしてしまったり、対応に抜け漏れがでたりする可能性があります。

課題の背景や詳細を課題管理表に明記しておくことで、記憶違いによるミスを防ぐことができます。記憶が薄れたとしても記載された内容を読み返すことで正しい認識をもって対応することができます。

課題に対して何かしらの対応をしたら、対応した日付と対応状況、担当者を記載しておきます。後でそれらの項目を確認すれば課題の現状を把握することができます。

課題の背景や内容、対応状況の項目は、課題が発生した時や対応をした時にできるだけすぐに課題管理表へ記載しておくべきです。記憶が鮮明なうちに記載しておけば、時間がたってもその課題に対する認識違いや対応の抜け漏れを防ぐことができます。

課題をチーム内で共有する

課題の内容や対応方法について特定のメンバーだけが把握していて、チームメンバーが把握していないという状態は望ましくありません。そのような状態では、課題の解決にチーム全体の力を活用することができません。

チーム全体が課題解決に向けて行動することで、課題をスムーズに解決することができます。そのためにはチームメンバー全員が課題について把握できるように課題管理表を活用する必要があります。

発生した問題をどのように認識して対応するかは人によって異なります。課題管理表に問題の内容と対応方法について明記しておけば、チーム内のメンバーが課題に対して同じ認識を持つことができます。対応するメンバーによって結果に差が出るということを防げます。

チームメンバーが協力して問題に対応するさいは、別々のメンバーが同じ作業を実施してしまうことのないようにしなければなりません。課題管理表に担当者と対応の実施状況を記載しておくことで、誰がどこまで対応したか把握できるので、対応の重複を防ぐことができます。

課題管理表を活用してチーム内で課題を共有する上で注意すべき点は、課題管理表を極力一つの場所にまとめるということです。様々な場所にある課題管理表が存在していると情報を探しにくくなったり、同じ課題を別々の課題管理表に記載して重複してしまうことになります。

課題管理表を個人で作成して持っているだけでは効率的な課題解決はできません。チーム全体で共有することで課題をチームで協力して解決することができるのです。

課題に優先順位をつける

システム開発では日々多くの課題が発生します。すべての課題を解決できるのが理想ですが、予算や人員、時間には限りがあるため全て対応出来るわけではありません。

課題には緊急を要するものもあれば、顧客にとっては余裕があれば対応してほしい程度の要望もあります。要望レベルのものを先に対応してしまうと、本当に対処しなければならない緊急を要する課題を放置してしまう可能性があります。

課題に優先順位をつけて、優先度の高いものから解決していくことが重要になります。ただ、優先度は状況によって良く変わるので、優先度という項目を課題管理表に設けるのは適していません。代わりに重要度や期日という項目から課題の優先度を判断するとよいでしょう。

予算や人員に余裕がない場合は、重要度が低い課題に対して「対応しない」や「運用で対処する」という選択もとれます。期日までに必要な課題を解決するためにも課題に優先順位をつけられる項目を課題管理表に入れておくべきです。

同じような課題に対応しやすくする

システム開発を進めていくと似たような課題が発生することがあります。同じ問題が発生するたびに何度も対処していては時間もかかり、業務の質も向上することはできません。

同じような課題を繰り返さない、あるいは発生しても最短で対処することがシステム開発の効率を高めることにつながります。課題管理表を活用することで同じような課題に対応しやすくなります。

課題管理表に記載した課題は、また起こりうるリスクとして想定することができます。どのような原因や背景で発生したかが明記してあれば、それを確認したメンバーは同様の問題を発生させないように対策することができます。

課題に対してどのような対処をしたか記載してあれば、その方法を参考にして同じような課題を迅速に解決できます。時間の経過で過去に発生した課題についての記憶が曖昧になっていたとしても、課題管理表の対応状況を確認することですぐに対処方法を思い出すことも可能になります。

別の人が課題管理表に記載されているものと同じ課題に直面した場合、過去の対処方法を参考にすることで新たに調査する手間が省けます。分からない点があっても、記載されている課題の担当者に確認するという対応がとれます。

課題管理表に記載された情報により、同じような課題の再発を防ぎ、発生した場合も迅速に対応できるようになります。

課題管理表の運用で注意すべき点

課題管理表は一度記載すれば終わりということはありません。課題は日々発生し続ける上に対応することで状況も変わっていきます。

課題の変化に対応するため、課題管理表は更新し続ける必要があります。しかし、実際は課題管理表を作成したはいいが、更新されなくなるということがあります。

課題管理表が更新され続けるようにするためには、課題管理表を適切に運用する必要があります。課題管理表を運用するさいに注意すべき点を解説していきます。

課題を記載した時点で対応方法も記載する

課題管理は目標との差を解消するための対処方法を管理します。対処方法を管理するためには問題となる事象の原因を把握していなければなりません。

問題となる事象が発生したら課題管理表に発生した問題とその対応方法を記載します。そのさいに問題の内容や背景だけ記載して、対処方法を後回しにしてはいけません。時間が経つほど記憶もあいまいになるので、対応方法を後で記載するというのは割けるべきです。

課題管理表に初めて記載する段階で対応方法をどう記載すればいいか分からない場合、その問題の原因がわかっていないということになります。原因が分からない状態で課題管理表に問題の内容だけ記載すると、対応方法が定まらないまま放置されてしまう可能性があります。

具体的な対応方法が記載できない状態ならば、対応方法が明確になるまで原因を深堀するべきです。課題管理表は発生した問題をただ記載するものではなく、あくまでもその対応方法を管理することが目的です。対応方法も必ず記載するようにしましょう。

担当者、期限を決めることで課題が放置されることを防ぐ

課題は管理表に記載すれば終わりではなく、それを対応していく必要があります。記載された課題が誰にも対応されずに放置されるとシステム開発に後々大きな影響を及ぼします。

課題が放置されてしまうことを防ぐためには、期限と担当者を決めることが重要です。その課題はいつまでに対応しておくべきか、誰が責任を持って対応するべきかを把握できるようにします。

期限はシステム開発の遅延を防ぐために必ず設定しておくべき項目です。複数のタスクを同時並行で進めることも多いシステム開発では、期限を設定していない課題は後回しにされいつまでも対応されない可能性がでてきます。

期限には完了期限と着手期限があります。完了期限はその課題が解決されないとシステム開発に影響が出る日を記載します。着手期限は対応を開始するべき日を記載します。

期限で重要なのは完了期限よりも着手期限です。対応を始めてみたら予想していたよりも難易度が高かったという可能性もあるので、着手期限は予想される対応時間よりも余裕を見て設定しましょう。

特に顧客や他部門に対応を依頼する課題の場合、相手が対応する時間も考慮して着手期限を早めに設定する必要があります。相手が忙しくて対応が遅れる場合でも、早めに依頼を出しておくことで完了期限までに間に合う可能性が上がります。

担当者を記載するさいに避けなければいけないことは、記載する名前が組織名だったり複数人だったりすることです。複数人で共同して対応する課題の場合に担当者があいまいになりがちです。

誰が対応するべきか明確になっていないと「誰かがやるだろう」と放置されたり、複数人が同じ対応をしたりしてしまう可能性があります。複数人で協力する課題でも現在の作業の責任を持っている1人の名前を書くようにします。

更新しやすくなる仕組みをつくる

課題管理表には様々な項目があります。必要そうな項目だからと安易に全ての項目を管理表にいれると更新する手間が増えます。どんなに情報がそろっている課題管理表であっても手間がかかることで運用されなくなっては意味がありません。

実際に課題管理表を活用するメンバー間で話し合って、運用しやすいように必要最小限の項目に絞り込みます。また以下に示すような手入力の手間を省く機能をつけて記入に時間がかからないようにします。

  • ステータスや重要度などの入力する値のパターンが決まっているものは選択式にする
  • 完了日を入れたら背景色が変わるように自動化する

更新するさいに必ず記載する項目やどのようなタイミングで記載するかという最低限のルールを決めておくことも重要です。人によって更新しない項目があったり、重複して登録されたりして読みづらい課題管理表になると活用されなくなってしまいます。

また、日々発生する課題は、対応することで常に状況が変わります。課題管理表は対応したさいに更新するだけでなく、定期的に見直して整理する必要があります。

課題管理表の内容を確認するミーティングを定期的に開くことが有効です。各メンバーが担当している課題についてミーティングの前に課題管理表に反映するというルールを決めておくことで、課題管理表を最新の状態に保つことができます。

注意しなければいけないのは完璧に運用しようとしてルールを設定しすぎると、更新するのが手間になるという点です。あくまでもメンバーが課題管理表を活用しやすい運用方法にすることを心掛けましょう。

課題が複雑になったら分割する

課題は解消するまでに複数の対応をしなければいけないこともあります。課題を対応していく過程で新たな課題が判明していく場合もあります。

一つの課題に対して複数の事象が含まれていると対応方針が定まらずいつまでも完了させられません。また、そのような課題は内容や対応方法が複雑になり把握しづらくなってきます。

課題の対応内容が多くなってきたり、別の課題が発生したりしてきたら同じ課題の中で対応するのではなく、別の新たな課題として課題管理表に記載するべきです。

一つの課題に一つの事象とすることで課題の状況も把握しやすくなり、いつまでも完了させられないということも防げます。定期的にミーティングを開いて課題を見直すことで、複雑な課題を発見して分割していき、常に課題の内容や対応方針が分かりやすいようにしましょう。

まとめ

システム開発では問題は何かしら発生するものです。その問題を以下に効率的に解消していくかがシステム開発の成否に影響します。問題の内容とその対応方法を管理する課題管理表が重要になってきます。

課題を管理する課題管理表にはどのような項目が必要なのかを理解しないと、システム開発中に発生した問題の一覧にするだけになってしまいます。それでは手間がかかるだけで問題の解消にはつながりません。

課題管理表を最大限に活かすためには、課題管理表を作成するメリットや運用するさいの注意点を理解しておく必要があります。

必要な項目がそろっているほど課題を詳細に管理できます。課題管理表を記入するさいのルールを決めておけば運用のミスも減らせます。しかし、項目やルールを充実させることで手間がかかって更新されなくなるのは本末転倒です。

課題管理表を作成する目的はあくまでも課題を解消してシステム開発を達成することです。課題管理表を作成するさいは、チーム内で無理なく運用できるかどうかを重視しましょう。

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